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【教育】 中学校の技術家庭科の試験問題に思う

※「中学校 技術 テスト Excel (Word)」というようなキーワードでここに到達した方へ
ここでは「ExcelやWordに関する不適切な出題が見受けられることと、不適切である理由」を述べていて、学習法を示しているわけではありません。Microsoft Office の学習方法を知りたい方には、私が大学の授業で使っている教科書で学ぶことをお勧めします。この手の書物にしては内容がよく整理されていて、中学生でも十分自習できる内容なので、下にアマゾンへのリンクを貼っておきます。一方、良い点を取れなかった場合は、この記事の本文を読んで、点を取れなかった原因が自分の学習不足であったのか、それとも、問題が不適切であったのかを考えてみるとよいと思います。

Office2016で学ぶコンピュータリテラシー

自習所としては、以下の2冊もお薦めです。

(以下が本文)

中1の娘が、初めての定期考査を受けてきた。

帰宅後、技術家庭科の試験で「なんとかリボン」を忘れていて書けなかったと言った。

家庭分野の出題かと思ったら、技術分野の出題で、Microsoft Ofiice 2007以降で採用されたインタフェースの「リボン」のことだった。

私は大学でMicrosoft Officeを教えているが、リボンそれぞれの名前を覚えさせたこともないし、ことさらに強調して教えたこともない。エアーパソコン競技の練習ではないのだから、Officeを起動したらいつでも目の前に見えているリボンやその名称を覚えなくても、円滑にOfficeを使える。だから、リボンの名称を暗記させる必要を感じない。

大学でPC教育を始めて30年以上が過ぎたが、その間にもインタフェースはどんどん変わってきた。今の中学生が大人になったとき、果たしてリボンは残っているだろうか?(それ以前にマウスとキーボードという拷問器具がまだ残っているだろうか?)

ワイド画面が主流になって、画面の縦横比は、縦が狭く横が広くなっている。現在のノートPCで主流の解像度であるHD(1366×768)でリボンを表示させると肝心の入力画面がとても狭くなり、広い範囲を見渡すことが困難である。リボンは現状のノートPCにとっては間違えたインタフェースだと私は思う。(フルHD以上あるいはHDでも縦型のモニターであればリボンはそれなりに便利であることは認めるが、それ以前のプルダウンメニューと有為な差があるとは思わない。リボンを折りたたんでおけばよいという反論もあるだろうが、出したり折りたたんだりするのは有意義な作業ではない。折りたたまなくても良いインタフェースデザインをすべきだと私は思う)。

さて、リボンひとつひとつの名称を憶えておくことは、Word 検定、Excel検定などの民間資格の受験には必要なのかも知れないが、義務教育で必要なことではないだろう。

話を戻すと、どうしてこういう馬鹿げた出題がなされるのだろう、、、。

やや好意的に見れば、Microsoft Officeがデファクトスタンダードであるからかもしれない。しかし、デジュールではない。ここで、デファクトスタンダードとデジュールスタンダードの違いを教員は知っているのだろうかという次なる疑問がわいてくる。

OpenOffice.org を採用した自治体が話題になったことがあるが、少なくともその自治体の役所ではOpenOffice.org がデファクトスタンダードである。もし、その自治体の公立学校の義務教育でOpenOffice.org を採用していたら、子供たちにとってのデファクトスタンダードは Microsoft OfficeではなくOpenOffice.org である。つまり、その自治体の小中学生はMicrosoft Office のリボンの名称を知らなくてよいかわりに、OpenOffice.org の操作体系を覚えなければならない、、、、そのようなローカルルールが義務教育に適用されてよいのだろうか? 愛知県の子供たちはトヨタ車以外知らなくてよい、広島県の子供はマツダ車以外知らなくてよい、そういう教育があってよいのだろうか?

結局、娘が受けたテストの問題は「一民間企業がある特定の時期に販売した特定の商品」のことを問うているわけで、

A社の2010年型洗濯機の操作パネルの右から3番目のボタンは何か?

と尋ねるのと同じようなものなのだ。

娘にはそんなことは間違えてもよいし憶える必要もないと言ったが、間違えたことによって成績が下がり、ひいては内申書にも影響を与えるのだろうかと思うと恐ろしくなる。

私は大学1年生にコンピュータリテラシーを教えているが、情報教育という名目の下に特定ソフトの操作を教えている学校が多いことは、残念ながら事実である。実際のところ、さまざまな制約があって特定のソフトを使わざるを得ず、そのソフトが属するジャンルの一般論だけでなく、そのソフト特有の操作法も教えなければならない。大学においては職業教育の一環としてデファクトスタンダードを身につけることの意義がないとはいえないが、なんとかしなければならない課題だと思っている。←自戒を込めて。

さらには、小、中、高で子供たちが学んだ情報教育は、早くも大学においてほとんどと言えるくらい役に立っていないということを小中高の教員たちに知って欲しいとも思う。(例外、つまり、良い情報教育を受けたのだろうと感じる学生もいるが割合はほとんどゼロに近い。)

保健体育でも同様の出題があった。こっちは息子の方だが、以前から、

今年の Jリーグで活躍した選手は誰か?

というような問題が出されている。

音楽のテスト「去年のレコード大賞を受賞したのは誰か?」

国語のテスト「去年の流行語大賞は何か?」

理科のテスト「今年のイグノーベル賞は誰か?」

家庭科のテスト「クックパッドでいま一番アクセスされている料理は何か?」

出題者は各科目に関する時事問題だと主張するのだろうが、政治や経済のように全国民に影響を与えることに関する時事問題ではなく、知らなくても全く困らない特定分野の些末な時事問題(要するに雑談のネタにしかならないこと)が義務教育のテストで出題されるのはピントが外れていると私は思う。

「Microsoft Officeのリボンのような部分は何のためにありますか?」

という出題なら意義があるし素敵なのに、、、と、思う。

カテゴリー:教育
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