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【CADとかBIMとか】 A&A設立30周年に寄せて

もうひとつのブログに投稿していましたが、事情でこちらに移しました。(2014/8/16)

ある学校で、非常勤講師としてCADの授業を担当しています。

昨日の授業中、就職活動中の学生さんが、説明会で「CADだけではだめ」と言われたと困惑顔で言いました。

私は、説明会を聞いたわけではなく、その学生さんから超断片的に聞いただけなので深いところは分かりませんでしたが、ひとつの考え方として、ニワトリか卵かという観点から彼にその言葉を解説してあげました。でも、どうなんでしょう、、、上の話におけるCADは、たぶん、製図CADがイメージされているんでしょうね。

 

2003年、以前勤めていた大学のオープンレクチャ『CADが拓く建築デザインの未来』にお呼ばれして、、、、実は私が在職中に立ち上げた公開講座のシリーズで、ありがたいことに同僚が続けてくれていたのですが、、、、『3Dはもういらない』とぶちかまして、企画運営と司会を務めてくれた同僚を困らせました。

 

私は全く予期していなかったことですが、講演者の一人、新庄宗昭さん(当時エーアンドエー社長)も、CADはいらないというような表現でCADのあり方について話されました。講演者二人が、逆説的な言葉でプレゼンをしてしまったので、司会のW氏はかなりあたふたしたようでした(ごめんね)。

後日談ですが、「CADはいらない」とぶちかました新庄さんと私は、共著でCAD(VectorWorks)の教科書を出しました。それがOASIS加盟校用のテキスト『CADリテラシー演習』ですが、なんとも逆説的な物事の運びだとは思いませんか?

 

このオープンレクチャで伝えたかったのは、CADソフトだの手書きだの、たんなるツールを意識しなければならないような設計プロセスのあり方はよろしくないということで、CADという概念を否定したのではありません。教育機関に対しては「CAD演習というような授業名は、もはや恥ずかしいものですよ、考えを変えてみませんか?」というようなことを言いたかったのでもあります(同様のことを在職中から言ってましたが、理解者はW氏ひとりでした)。

 

自分が立案して始めたオープンレクチャの最終回だったので、ちょっとショッキングな言葉遣いを使ってみたかったというのもひとつの理由です。

 

「デザイン行為」という観点からは、2D-CADソフトと手書き製図に、有為な差があるとは私は考えていませんが、このときのプレゼンではとくに言わなかったと記憶しています。しかし、冒頭に書いたような学生さんが聞いた言葉は、手書きかCADかという観点が、未だに何らかの判断基準として用いられているということを示唆しているのだと思います。

 

さて、2D-CADソフトとは、ほとんどの場合が製図の効率化を目的に開発されていると思われるので、空間デザインに適した道具であるとは言えませんが、製図の効率化やデータ共有や継承という点では、手書きと比べると、圧倒的な優位にあると思います。冒頭の話は、効率化のところまでは意識されていたとしても、データ共有や継承という観点はたぶん欠けていただろうと思います。だからどうしたと言われても困るのですが、「残念だなぁ」という気持ちと、「やっぱりなぁ」という諦めにも似た気分を持ちました。

 

さて、BIMというジャンルのソフトが宣伝され始めてから、もう何年も経ちます。ここではベンダーさんが売らんがなのために喧伝しているフレーズはさておいて、Building Information Modeling という概念として捉えてみると、2D-CADも、”B”と”I”を操るソフトです。Building の Information を、二次元図面という表現手段で伝達、共有、継承するシステムですから。

 

未だに手書きとCADが二者択一的なコンテクストで語られることは、業務あるいは職能のあり方が二分化していくことを暗示しているのだと思います。

 

 

2004年のエーアンドエーEXPOで講演したとき、私は「今後のCADはBIMとして進化してほしい」という希望と期待を語りました。このとき私は、Building Information Modelingという言葉を全く知らなくて、Building Information  Management という言葉を自分で作って、その頭文字としてBIMと言いました。

 

ちょっと自画自賛させてもらうと、Building Information Management の概念を実現するためのソフトウェアの一形態が、Building Information Modeling ソフト、と言ったようなイメージ。

 

CADソフトとは、データベースとその表現手法のパッケージであることを、開発者は分かっていると思います、とくにBIMというジャンルのソフト。私は大学時代、CP/M-80上で Fortranを動かしてパース描画システムを作ろうと試みた経験から、そうであることを分かっているつもりです。(当時はワイヤフレームでなんとか表示できる程度のパフォーマンスしかなかったので、表現のためのルーチンはなんとかなりそうでしたが、データベースの構築がものすごく大変で挫折。)

Interfaceの話も重要なんですが、いまは脇に置いときます。

その後、dBASE IIに出会って、ソフト開発はやめてユーザーに徹することにしたのですが、いかなる幸運か、教員として赴任した大学で、同じような考えをもつ人物に出会いました(上記、オープンレクチャで新庄さんと私が困らせたW氏)。彼との対話を通して、CADとは建築情報を扱うものであるという認識を強固にすることができました。

私は授業としては、建築計画だの空間論だの軟派な科目を担当していたこともあって、設計プロセスへの適用と表現の応用に興味の方向を向けていきましたが、背後で動くデータベースというものを常に意識の底において使ってきたつもりでいます。そういう視点で眺めてみると、この20年ほどの間の、2D-CAD → 3D-CAD → BIM という変化は、たんにPCパフォーマンスの向上に伴ってCAD概念のソフトウェアとしての表出のしかたが変わったにすぎません。根底のところで何かが動いたわけではないので、100年後の歴史家には大きな変化であったとは認識してもらえないでしょう。

 

建築情報のデータベースを扱っているという感覚をもっていれば、その変化に抵抗なくついて行くことができますが、操作や表現手法という表面的なスキルのみを憶えてきた人にとっては、変化に対応するのは、かなり難しいことでしょうし、意図的に対応しない人も多いでしょう。

こうして、近いうちに製図CAD使用者とBIM使用者の二分化が進み、それは、業務の明確な二分化をもたらすでしょう。

これは建築士の職能に影響します。

 

ここでは、それを高等教育機関での建築教育ということに戻してみます。

2008年の第1回BIMミーティングや、2009年の第1回VectorWorks教育シンポジウムで、上記のような考えを根本に置いた講演を行いました。いずれもインターネット上に記録が残っていると思うので、興味がある方は検索してみてください。

 

私が30年来追い求めてきたようなCADのあり方に、世の中の全員が対応していくことには困難が伴うと思われます。だから二分化するだろうと上に書きました。(二分化することを否定しているわけではありません。二分化という言葉で、勝ち組と負け組に分かれると言いたい訳でもありません。) ここでは、二分化を前提とした教育のあり方が、当面の高等教育機関で課題となるであろうということを言いたいのです。

 

そういう意味では、新庄さんとの共著『CADリテラシー演習』は、予言(?)の書なのですが、ある意味で簡素すぎて、ある意味で奥深すぎて(!)、あまり伝わっていないだろうなぁと思っています。

 

このような状況下、CADベンダーには、できればCADを販売し始めたときからやっておいてもらいたかったことですが、いまからでも間に合うので、がんばって、レシピを提供していって欲しいと思います。

「男の料理」的な達人のレシピは散見されますが、一般大衆にとっては無用の長物であったりします。

私は、ありふれた日常生活で気楽に作れ、まずくないと評価される料理を提供できる人を増やすことによって、世界の建築物の平均的な質が向上していくのだと信じています。医療の世界ではQOL(Quality of Life)という言葉がありますが、建築デザインにもQOL向上のためのレシピが強く要求される時代に入っていき、もしかしたら建築士の職能が二分化することの意味や意義が見えてくるのではないかと思います。

当面、それを主導するのはBIMを軸とした建築教育カリキュラムであり、CADベンダーにはそのための何らかのアクションを大至急起こして欲しいなぁと、、、あぁ、これは第1回VectorWorks教育シンポジウムで述べたことですが、数年経ってもリアクションが感じられないので、すこし寂しい思いでいます。

 

ということで、十分長くなったわりには、内容があっちに行ったりこっちに来たりになってきたので、これ以上長くなる前にストップします。

A&Aさん、30周年おめでとうございます!!

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