【CADとかBIMとか】 教育の難しさの要因・スキル教育とデザイン教育
別記事で、スキル学習は集中が良いということを述べました。集中が良いと考えることについては、いくつかの理由があります。その中のひとつをお話しましょう。
スキル教育、ということに絡んできます。
CAD演習というような科目は、概して週1回、1~2コマ×15回(半期)で行われています。困るのは;
学生たちは、前の週の授業でやったことの「多くの部分」を忘れて授業にやってくること
もう慣れっこになっているとはいえ、こういう状況はなんともむなしいものです。CAD授業を担当したことのある人なら、この感覚を共有してもらえるのではないかと思いますが。
でも、これは学生たちがおバカさんだからということではなく、基本的なスキルは一気に教え込んだ方が効果的だということです。CADにかぎらず、一週間の間、物事を忘れないためには、授業当日、復習してもらう必要があります。復習してないから長期記憶として残りにくいので、翌週の授業で学生さんたちは「先週やったでしょ?!」と言っても、首をかしげるばかり。
教員たちは予習復習の習慣をもたずに大学に入ってくる学生がほとんどだという状況を、甘んじて受け入れざるを得ません。抵抗してみてもその事実は変えようがないから、いくらストレスがたまろうと教員側が柔軟に対処するしかないのです。それにとくにCADの場合、PCとソフトは教材としては高価だから学生たちに強制購入させにくくて、自宅学習を誘導・誘発しにくいし、また、学校のコンピュータ室が学科の教室から遠く離れていていて行くのがおっくうとか、あるいは、共用であるからいつでもやりたいときに使えるわけでもないので、自由な学習環境を整えにくいという事情もあります。
また、身につきにくさの要因には、手描きと違ってCADであるから、ということもあげられると思います。
手描きで製図を学んだとき、どうしてこんなことをしなければならないのか?、という疑問を抱いた人は少ないと思います。建築関連学科で製図を学ぶのは自明のことであるという社会的なコンセンサスがあるからでしょう。授業でも完成図面が教材として提示されますが、その図面を元に建てられた建物が実在することも多いから、リアリティが高いです。また習得すべきスキルも、いくつかの製図道具を上手にハンドリングできるようになることという学生たちにも理解しやすい明快なゴールがあります。
ところが、CADは、現在学んでいる操作がいったい何に結びつくのかが、いまひとる分かりにくいようです。だから学んでいても目標を設定しにくく、それがまた記憶が残らない原因になっているように思えます。要するにCADの基本的なスキルの部分は、「欲」を感じにくい部分であるようです。
CAD(コンピュータ)の最初の部分は体育と同じで、あまり深い意味を考えずにひたすら繰り返すことが大切。
と最初の数回の授業で言いますが、なかなか通じないようです。やっぱり考えちゃうのでしょうね。
などと観察される周辺事実を書きました。教育にはまず観察が重要だと思います。観察と実験とそれに基づく観察とフィードバックというループを回し、さらに学年ごとに違うメンタリティに対応してい必要もあるので、コンセプトは揺らがなくても、運用については一般化しにくいですが、とにかく短期集中が良いというのは、下記の2点につきるかと思います。
- 記憶を途切れさせないこと
- 学生たちに物思う暇を与えないこと
そのためには、たとえば下記のような開講のしかたがあるでしょう。
- 1日4コマ×3を1タームとする。
- 3コマ分は、インストラクターが教える。
- 4コマ目は、その日の復習。ドリルを行う
- これを2ターム行う。
これで、スキル主体の教則本を1冊完了できるでしょう(コマ数からは、1単位分程度になりますね)。あとは、週1~2コマの授業でデザイン教育+スキル教育を継続していく……。
スキル教育とデザイン教育の絡みの部分について、CADソフトの時代は主に建築計画や意匠とだけ絡ませればなんとか事足りたと思いますが、BIMがでてきてしまったので建築教育全般の中にBIMを絡めなければならなくなっていて、そうすると週1コマのCAD演習なんて科目は何をやっているのか分からない授業に陥ってしまうのです。
やっぱり私は、教員の方々も多少の意識改革を行うべきときが来ていると思う次第です(20年近く前からそう思ってるんだけど、前職場では失敗しました)。
これは実は10年以上前から言ってることですけど、当時はまだBIMが動かせる環境はありませんでした。今はもう違います。